僕の小学校は、台東区の中でも古い校舎で、西洋建築を取り入れた洋風モダンの建物でした。
入学式の日、教室で初めて担任の先生の話を聞く時間、先生が校舎の歴史や、建物、教室の作りの話をしてくれました。
「皆さん、教室や校舎の柱をよく見て下さい。下側の角は尖ってます。そして上にいくにつれ真ん中あたりは角が丸くなっていますよね?これは昔のデザインで、建物を素敵に見せるためのお洒落な作りなんです。」
その他の話は全く覚えてませんが、この時の担任の先生の話はとてもよく覚えています。この日からやたら柱の角が気になり、今でも角を見るたびにこの話を思い出しています。上野国立博物館、文京区の岩崎邸、目黒庭園美術館など、同じような年代の西洋建築には、そのようなデザインになっている事があり、こっそり心の中で、知ってる知ってる〜と優越感に浸っています。
あの時の話が、自分の知識の引き出しにしまえた事が少し嬉しく思います。
この出窓をつくる際、真っ先に思い浮かんだディテールがこの思い出でした。柱には必ずこのテイストを加えようと、最初から考えていたのです。小さい拘りですが、オーナー様からの「遊び心ある店」のお題に繋がると思い、試みております。
そのほか、面取りという加工を色々な箇所に施しています。カウンター、棚板、ベンチ、トイレの洗面台、それぞれに違う面取りをしていますので、手で触って頂き隠れた拘りに触れて頂けるのも面白いと思います。
西洋のお洒落は、どこか日本の粋な作りに通じるのかもしれません。
藤本